産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aの動向は?事例から相場・注意点まで解説!
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A実施件数が増加しています。既存の産業廃棄物処理・環境関連業界の事業者を買収する新規参入企業が多い傾向にあります。本記事では、同業界のM&Aの動向や過去の事例、注意点などについて解説しましょう。
目次
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A動向
産業廃棄物処理・環境関連業界の概要やM&Aの動向を解説します。
産業廃棄物処理・環境関連業界の特色
産業廃棄物処理・環境関連業界の特色は、以下の表のとおりです。
特色 | 内容 |
ローカルビジネス | ・廃棄物が発生した地域から近い範囲内の処理場を利用 →遠方の処理場をあえて利用することはない |
細分化されたマーケット | ・廃棄物の種類やエリアは会社ごとに違う →どのような産業廃棄物に特化しているかは会社ごとに異なる |
都道府県の認可制 | ・産業廃棄物処理業は、都道府県からの認可制 →新規参入がしにくい業種である |
専業が少ない | ・産業廃棄物処理業の大半は、自社で発生した産業廃棄物処理を実施 →産業廃棄物処理専業というわけではない |
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aの現状と動向
産業廃棄物処理・環境関連業界において、以下のような現状と動向が見られます。
- 売り上げの極端な差
- 労働力の減少
- 産業廃棄物の増加
- 新技術や設備の開発
大手企業は新技術や設備を開発が進んでいることから、年々、大手企業とその以外の企業で売り上げの差が拡大しています。環境省によれば、産業廃棄物は2050年までに横ばいか徐々に増加していく見込みなので、売り上げの差はさらに広がると予想されます。
雇用条件が決して良いとはいえない産業廃棄物処理業では、他業界へ人材が流出している傾向にあり、労働力不足が否めません。
産業廃棄物処理・環境関連業界の今後の課題
産業廃棄物処理・環境関連業界の今後の課題として挙げられるのは、以下の2点です。
- 産業廃棄物処理業の競争激化
- 労働力の不足
産業廃棄物処理業は「産業廃棄物を処理する」という特性上、ほかの運搬業界と比較してサービスの差が付きにくく、価格の安さでしか競争できない業種といえます。加えて、近年の燃料代高騰問題も存在します。
安い利益と高い費用により利益の幅が減少したり、従業員が満足できる待遇が用意できずに労働力不足に陥ったりする点は、今後の課題といえるでしょう。
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A手順
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A手順を解説します。
手順に沿って実施する前に、まず以下の準備を済ませましょう。
- M&A専門家にサポートを依頼
- 自社の強み・弱みを分析
- M&Aに求める要素の検討
- M&A実施後の動向を予想
M&A実施の目的を明確化したら、実施に向けた動向をM&A専門家とともに確立させます。それらの準備が済んだら、実際に以下のフローに沿ってM&A実施に向けたアクションを起こします。
M&Aの選定・交渉
M&A専門家と契約すると、自社の希望に沿った交渉相手を提示してくれます。M&A専門家や金融機関、顧問弁護士などとともに、交渉相手が自社にもたらすシナジー効果やM&A成立の可能性を検討しましょう。
交渉相手が決まったら、交渉相手に「ノンネームシート」「企業概要書」と呼ばれる自社の情報を示した書類を送ります。それに対して返事が来たら、秘密保持契約を締結してやりとりの開始です。秘密保持契約とは、M&Aに関する情報や交渉を、外部に漏らさないことを約束する契約をいいます。
基本合意の締結
交渉相手とやりとりを開始すると、トップ面談と条件交渉が行われます。
トップ面談とは、双方の代表者同士が面談を行い、交流を図る取り組みを指すものです。条件交渉とは、トップ面談後に具体的なM&Aの条件をすり合わせすることを指します。
トップ面談・条件交渉が完了して双方が合意の場合は、相手企業と基本合意を締結します。基本合意とは、あくまで仮契約のような位置づけの契約です。最終契約と呼ばれる契約がいわゆる本契約の位置づけになります。
デューデリジェンス
基本合意が完了したら、買収元の企業はデューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスとは買収先の企業の社内調査を意味し、簿外債務の有無や社内トラブル、買収価格の適正性の調査を目的に実施されるフレームワークです。
デューデリジェンスを何度も実施し、買収後に想定していない債務を承継したり、トラブルが発生したりすることを防止します。買収元の企業はデューデリジェンスで買収先の事業を具体的に理解することで、買収後の動向を確立させます。
最終条件交渉
デューデリジェンスによる買収先の調査が完了したら、M&A最終契約に向けた条件交渉に移行します。最終契約に向けて、以下の事項を検討・交渉します。
- M&A取引価格
- M&A取引価格の支払い方法
- 役員や従業員の待遇
- 譲渡時期
- 株券・重要物・重要書類の確認・引き渡し
検討事項と併せて、M&Aの具体的なスケジュールや実施後の動向を明確化します。契約書の製本や売却後の引き継ぎ計画、株券の発行などをM&A専門家と相談しながら進めます。
最終契約締結
双方、最終条件に合意したら最終契約書に基づき締結します。最終契約書は法的拘束力を持つため、締結後は契約内容の変更ができません。
最終契約段階で、想定していたM&Aとかけ離れているようであれば、交渉自体を破棄する決断をすることも念頭に置いておきましょう。無理にM&Aを実施してしまうと、希望する利益やメリットが得られない可能性があり、失敗に終わります。
クロージング
クロージングとは、最終契約をもとにヒト・モノ・カネなどを移動させる行為をさします。クロージングが完了すると、M&Aの一連の流れは終了です。
クロージング当日は混乱することが予想されます。クロージング当日の動向をあらかじめシミュレーションして計画書を作成しておけば、当日はスムーズに実施できるでしょう。
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aのメリットとデメリット
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aのメリットとデメリットを解説します。買収側(買い手側)と売却側(売り手側)の目線で解説しますので、それぞれ参考にしましょう。
メリット
売り手側
売り手側のメリットは、以下のとおりです。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用確保
- 売却益・譲渡益の獲得
- 経営基盤の安定化
- 個人保証の解消
M&Aを実施すると後継者の不在や従業員の雇用、個人保証の残債などの問題が解決できます。自社のノウハウを他の企業に承継できることから、培ったノウハウは損失せずに他社事業で貢献できます。
M&Aで売却益を獲得できれば、新たな事業を始めたり生活資金に充てたりできるでしょう。
買い手側
買い手側のメリットは、以下のとおりです。
- 労働力の確保
- 効率的な事業拡大
- 設備・施設の獲得
- 技術・顧客・ノウハウの承継
- シナジー効果への期待
産業廃棄物処理業は、労働力不足や設備・施設開発の許可の課題があるため、簡単に事業参入できないのが問題です。しかし、産業廃棄物処理業の会社を買収すれば、優秀な労働力を確保したり、許可済みの施設・設備を利用できたりするメリットがあります。
産業廃棄物処理業は、ローカルビジネスの観点で事業エリアの拡大が困難です。しかし、M&Aによって未進出のエリアへの事業展開が可能となります。
デメリット
売り手側
売り手側のデメリットは、以下のとおりです。
- 希望条件が満たせない可能性がある
- 顧客との関係悪化のリスク
- 従業員が退職するリスク
M&A実施を希望しても買収してくれる会社が必ず見つかるとは限らず、見つかっても希望価格で売却できない可能性があります。
大手企業の傘下に入ると、従業員の待遇や顧客との取引金額がグループ内で統一されます。その影響で、従業員が退職してしまうリスクや、顧客との関係悪化のリスクが潜んでいることをあらかじめ念頭に置いておきましょう。
買い手側
買い手側のデメリットは、以下のとおりです。
- 簿外債務を承継するリスク
- 買収金額が回収できないリスク
売り手側の買収後、想定していない簿外債務や社内トラブルを承継しているケースが想定できます。最終契約前には念入りにデューデリジェンスを実施し、買収先企業の簿外債務や社内トラブルはすべて認識しておく必要があります。
買収したからといって、必ずシナジー効果が期待できるとは限りません。シナジー効果が生じなかった場合、買収費用が回収できない可能性が十分に考えられます。シナジー効果の見込みは、M&A専門家や顧問弁護士などと事前によく検討しておきましょう。
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aの売却・買収相場
M&A実施を検討する際に必要なのが、産業廃棄物処理・環境関連業界の相場を調べることです。相場と大きくかけ離れた取引金額で取引すると、大きく損をしたり買い手が見つからなかったりするケースが想定されます。
売却相場
売却相場を知るには、自社と同規模の会社を参考にしましょう。
一概に売却相場といっても会社の規模感や利益によって異なるため、参考になる情報が少ないケースが想定できます。M&Aのマッチングサイトで自社と同規模の売却案件を確認したり、過去のM&Aの実施事例を参考にしたりするとよいでしょう。
M&A専門家に相談すると、自社の企業価値を算出してくれたり、売却相場との比較をしてくれたりするため、積極的にアドバイスを求めることもポイントです。
買収相場
買収側は、買収費用を抑えすぎないことがポイントです。
通常売り手側は複数の買い手候補と交渉を進め、その中で買収金額が高い交渉相手を選択する可能性が高いと想定できます。つまり、買収価格を相場より低く見積もって交渉をしても、売り手から交渉中断を申し出る可能性があるでしょう。
魅力がある売り手企業ならば、他の会社も買収を検討している可能性があります。売り手企業をどうしても買収したい思いがあるならば、その評価に応じた買収金額や、時には相場以上の買収金額で取引する必要があることを念頭に置いておきましょう。
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A事例
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&A事例を紹介します。
自社と同規模の会社が実施した過去のM&A事例の取引金額を参考にして、実施の経緯を理解すると、M&A実施のイメージがしやすいでしょう。
エンビプロ・ホールディングスと富士見BMS
最初に紹介するのは、エンビプロ・ホールディングスと富士見BMSのM&A事例です。
2021年にエンビプロ・ホールディングスは、静岡県に拠点を置く産業廃棄物処理業者の富士見BMSを子会社化しました。
エンビプロ・ホールディングスは金属・電池などのリサイクル事業に加え、富士見BMSの木くずの処理能力を承継することで顧客満足度の向上を狙いました。
大晃運送と大興商会
続いて紹介するのは、大晃運送と大興商会のM&A事例です。
2016年に大晃運送は、環境プラントと呼ばれる廃棄物を処理して再利用可能な資源を作ったり、焼却炉を利用したりして発電を行うプラントを手掛ける大興商会を子会社化しました。
産業廃棄物の運搬業を営む大晃運送にとってシナジー効果が見込まれることや、大興商会の後継者不足問題解決の糸口として、M&Aが実施されました。
ヤマダホールディングスと三久
3つ目に紹介するのは、ヤマダホールディングスと三久のM&A事例です。
2021年、ヤマダホールディングスは産業廃棄物処理業を営む三久を子会社化しました。
M&Aの目的として、SDGsの達成に向けた重要課題のうちの1つ、「循環型社会の構築と地球環境の保全」に向けた取り組みを推進することが挙げられます。
ダイキアクシスとアルミ工房萩尾
4つ目に紹介するのは、ダイキアクシスとアルミ工房萩尾のM&A事例です。
2021年にダイキアクシスは、サッシ・エクステリア建材の施工・販売業を営むアルミ工房萩尾を子会社化しました。
ダイキアクシスは排水処理装置の開発や合成樹脂による製品の開発を手掛けており、アルミ工房萩尾を買収することで、顧客に対し、水回りに加えてサッシ・エクステリア建材に関するサービスを提供できるとしてM&Aを実施しました。
富士興産と環境開発工業
5つ目に紹介するのは、富士興産と環境開発工業のM&A事例です。
2022年に富士興産は、再生資源製造・販売や土壌浄化、産業廃棄物収集運搬・処理を営む環境開発工業を子会社化しました。
富士興産は燃料油やアスファルト、グリーン商品の仕入販売を営んでおり、環境開発工業を買収することで新規事業への参入やシナジー効果を期待しました。
大栄環境HDとセーフティーアイランド
最後に紹介するのは、大栄環境HDとセーフティーアイランドのM&A事例です。
2020年に大栄環境HDは、近畿地方で産業廃棄物処理業を営むセーフティーアイランドを子会社化しました。
大栄環境HDは産業廃棄物を手掛けており、セーフティーアイランドを買収することで、近畿地方の施設との連携や施設の新設などをはじめとしたシナジー効果を期待しました。
産業廃棄物処理・環境関連業界でM&Aを行う際の注意点
産業廃棄物処理・環境関連業界でM&Aを行う際の注意点は、以下のとおりです。
- 事前の準備をしっかりと行う
- 契約内容をしっかりと確認する
- デューデリジェンスは必ず行う
- M&Aの目的を明確にする
- M&Aの専門家に相談する
それぞれ解説します。
事前の準備をしっかりと行う
M&Aを成功させるには、自社や市場の分析、M&A実施後の動向を検討するなどの事前の準備を行いましょう。
産業廃棄物・環境関連業界は、買い手が多いため、売り手側が比較的優位にあるといえます。しかし、売り手側が優位だからこそ事前準備を徹底することで、高い金額で売却できたり、売却後の経営をスムーズに進めたりできます。
契約内容をしっかりと確認する
M&A交渉時には、契約内容をしっかり確認しましょう。
売却金額や従業員の待遇、関係先への影響などを踏まえて契約内容を確認しないと、M&Aを実施しても事業が悪い方向に進んでしまう可能性があります。最終契約まで締結すると、契約内容を変更できなくなります。
M&Aで失敗しないためにも、さまざまな観点で契約内容の確認を行いましょう。
デューデリジェンスは必ず行う
買収側は、必ず念入りにデューデリジェンスを実施しましょう。
デューデリジェンスをおろそかにすると、想定外の簿外債務や売却側の社内トラブルを承継するなど、さまざまなリスクが想定できます。特に税務・法務・会計の専門分野の潜在的リスクを見落とすと、訴訟問題に発展したり、その後の経営に悪影響を及ぼす可能性があったりします。
M&Aの目的を明確にする
買い手側・売り手側の両社とも、M&Aの目的を明確にしておく必要があります。
M&Aの目的を明確化しないと、M&Aの実施そのものが目的となってしまったり、買収・譲渡したけれど何もメリットがない事態になったりする可能性があるでしょう。
「買収したら、エリア拡大で顧客増加が見込める」「シナジー効果で、さらに高品質な商品開発が期待できる」など具体的な目的を掲げることで、効率的・効果的なM&Aが実施できます。
M&Aの専門家に相談する
M&A実施の際には、M&Aの専門家に相談することが最も重要です。
M&Aで事業を売却・買収するには、産業廃棄物・環境関連業界の知識に加え、税務・法務・会計などの専門知識が必要になります。経営者一人で専門分野を勉強することは非常に効率が悪く、M&A実施にたどり着くまで膨大な時間を要することになり、M&A実施の適切なタイミングを流す可能性があるでしょう。
M&Aの専門家に相談すると、デューデリジェンスの実施や交渉の進め方など経営者がつまづきやすい部分にサポートをしてくれます。加えて、自社に合った交渉相手を紹介してくれたり、M&A実施の動向をサポートしてくれたりするため、M&A専門家に相談しない手はありません。
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aは専門家への相談がおすすめ!
産業廃棄物処理・環境関連業界のM&Aは、専門家へ相談しましょう。
産業廃棄物処理・環境関連業界に特化したM&Aの専門家は、業種特有の課題や問題を解決しながら会社や事業のM&Aを成功に導きます。専門知識も有しているため、M&A実施にあたって経営者がわからない分野があっても、随時サポートしてくれます。
無料相談を実施しているM&A専門家を利用し、M&A成功を目指しましょう。
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