製造業のM&Aの動向を徹底解説!メリットや具体事例・ポイントは?
製造業界では、M&Aが盛んに行われています。M&Aをすることで、後継者問題を解決したり人材不足を解消できたりします。異種業からの新規参入をするきっかけにもなるでしょう。そこで今回は、製造業界のM&A動向や、事例・ポイントについて解説します。
目次
製造業界とは
製造業界の概要を解説します。
製造業界の定義
製造業とは、素材を加工・組立して製品を販売することで利益を得る業種を指します。
自動車・電気機器・医薬品・化学素材など、製造業で扱うものは多岐にわたります。
製造業界の分類
総務省による日本標準産業分類において、製造業は以下の24種類に分類されています。
- 食料品製造業
- 飲料・たばこ・飼料製造業
- 繊維工業
- 木材・木製品製造業(家具を除く)
- 家具・装備品製造業
- パルプ・紙・紙加工品製造業
- 印刷・同関連業
- 化学工業
- 石油製品・石炭製品製造業
- プラスチック製品製造業
- ゴム製品製造業
- なめし革・同製品・毛皮製造業
- 窯業・土石製品製造業
- 鉄鋼業
- 非鉄金属製造業
- 金属製品製造業
- はん用機械器具製造業
- 生産用機械器具製造業
- 業務用機械器具製造業
- 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 電気機械器具製造業
- 情報通信機械器具製造業
- 輸送用機械器具製造業
- その他の製造業
上記は中分類の区分けですが、中分類よりもさらに細かい小分類が多数存在します。
製造業界の現状・課題
- 人材不足
- 無形固定資産の設備投資不足
- 技術承継ができていない
上記で挙げた3点は、製造業界における課題・現状です。
2022年版ものづくり白書において、製造業界における34歳以下の若年層の労働者は、過去20年間で121万人の減少が見られています。一方で、高齢の労働者の割合は増加傾向です。若年層の人材不足問題が生じることで、後継者が育たない・見つからない後継者問題にも発展しています。
2022年版ものづくり白書において、製造業界全体で無形固定資産(ソフトウェア・システムなど)の設備投資をする企業が増加していることがわかります。しかし、増加傾向とはいっても、製造業界の半数以上の企業が無形固定資産への投資ができていない状況です。DX化に向けた推進は、まだまだ未浸透であるといえます。
日本の製造業には高い技術があるにもかかわらず、その技術の承継ができていない問題も生じています。先述した若年層の労働者不足問題に関連した問題でもあり、また、そもそも指導できる人材が少ないことも問題としてあるでしょう。
製造業界のM&Aの動向
製造業界のM&A動向を解説します。
先述した製造業界の課題・現状に対して、M&Aによる解決をしようとする企業が増えています。M&A動向を理解し、自社の今後における動向の参考にしましょう。
大手企業による海外企業・工場のM&Aの増加
製造業界の市場は、縮小傾向にあります。海外シェアを狙った大手企業による海外企業の買収動向が頻繁に見られるでしょう。
大手企業は海外企業を積極的に買収することで、国外にもエリアを構えられ、さらなる利益獲得が望める状態へと変化しています。
大手企業による中堅企業のM&Aの増加
製造業界のM&Aは、大手企業が中小企業を買収する動向が見られています。
売り手から見たM&Aは、経営悪化の解決・事業整理のために実施されることが多く、それは中小企業同士でのM&Aでは達成できないためです。
一方、買い手の大手企業の目線では、人手不足の解消・事業発展・新事業参入の観点から積極的なM&A動向が見られます。経営悪化の解決・事業整理をしたい中小企業を買収することで、双方が抱える問題を解決できるメリットがあるためです。
IT化対応のため異業種M&Aの増加
IT化を図る観点で、異業種が製造業を買収する動向も見られています。
自社にIT化を導入する際に関連企業をM&Aで取り込めば、比較的簡単に自社にIT化をもたらすことが可能です。IT化を図る観点以外にも、多角的な経営戦略動向を確立した企業は、積極的に製造業をはじめとしたさまざまなジャンルの事業を自社に取り込む動向が見られています。
後継者問題解決のためのM&Aの増加
後継者問題解決の観点で、M&Aを実施する動向も見られています。
先述したとおり、製造業では若年層をはじめとした人材不足が問題視されており、人手不足による後継者不足問題も関連して生じているでしょう。
M&Aでは、後継者・人材を獲得する手段として他業種でも活用されているフレームワークであるため、製造業も同様に活用する動向があります。
業績低迷中の企業をファンドが買収するケースも多い
製造業界では、業績低迷中の企業をファンドが買収する動向も見られています。
ファンドが業績低迷中の企業を買収する理由としては、企業価値を高めた後に株式を売却することで利益(キャピタルゲイン)を獲得するためです。
国内の製造業の企業は技術力が優れているにもかかわらず、経営面・資金面で乏しい一面があります。そのような企業は、ファンドの買収対象とされます。
製造業界のM&Aスキーム(手法)
製造業界のM&Aのスキームを解説します。
製造業界で活用されるM&Aスキームは、主に株式譲渡と事業譲渡の2種類が存在します。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手の株主が持つ株式を買い手に売却し、会社の経営権を移す手法です。
株式譲渡は、売り手の権利義務を包括承継するため、従業員・取引先・許認可に関する手続きが不要であることから、手続き面において比較的簡便です。M&Aでは、多くの企業が株式譲渡のスキームによる株式売却の手法を選択・実施する動向が見られています。
事業譲渡
事業譲渡は、売り手の事業の一部もしくはすべてを買い手に売却する手法です。
事業譲渡は株式譲渡と異なり、買い手が売り手から買収する資産や債務を選択できるため、買い手にとってリスクが抑えられるM&Aスキームとなっています。しかし、株式譲渡のような包括承継ではないため、従業員・取引先・許認可に関する手続きが必要となります。
製造業界の取引相場
製造業界のM&Aの取引相場を解説します。
大まかな取引相場
- 価格相場=時価純資産額+営業利益×2~5年分
- 時価純資産額=貸借対照表の資産・負債を時価換算して、資産-負債をしたもの
上記は、おおまかにM&Aでの相場価格・売却価格を知るための計算式です。
あくまで目安であるため、より正確な算出をするにはM&A専門家にアドバイスを求めます。
売却価格の元となる企業価値の算出方法
- コストアプローチ法:純資産ベースで企業価値を算出する方法
- マーケットアプローチ法:市場価格ベースで企業価値を算出する方法
- インカムアプローチ法:将来見込まれる利益ベースで企業価値を算出する方法
上記の3つは、企業価値をより具体的に算出するための計算方法です。純資産・市場価格・見込み利益の3視点での企業価値を算出し、それぞれの数値を調整することで正式な企業価値が算出されます。
製造業界のM&Aを行うメリット・デメリット
製造業界M&Aのメリット・デメリットを解説します。
買収側・売却側それぞれの視点で解説するため、それぞれ参考にしましょう。
メリット
売り手側
- 後継者問題の解決
- 譲渡益の獲得
- 廃業コスト削減
上記の3点は、売却側のM&Aメリットです。
人材不足による後継者問題が生じている製造業界では、M&Aが後継者問題を解決する糸口として活用されています。ほかの業種でも同様に、後継者問題を解決する方法としてM&Aは多くの企業で活用されています。
事業・会社を売却することで譲渡益を獲得できるメリットも存在するでしょう。譲渡益をもとに新事業を始めたり、引退後の資金として活用できたりします。
廃業コストを削減できるメリットも存在します。企業では設備や施設などを保有しており、廃業をするにはそれらを処分するためのコストが必要です。しかし、買い手に売却することで、廃業コストを減らしたり全く負担がなくなったりするメリットがあります。
買い手側
- 人材・ノウハウの獲得
- 売却企業の施設・設備活用
- 事業の内製化
上記の3点は、買収側のM&Aメリットです。
人材や売却側の事業ノウハウを獲得することで、自社事業の発展や新事業への参入ができるメリットがあります。
M&Aで他社を買収すれば、買収した企業の設備・施設を活用できるメリットもあります。設備や施設を新しく購入するには相当のコストが必要です。しかし、M&Aでそれらを保有する企業を買収すれば、維持管理コストのみでそれらを活用できます。
事業の内製化を図る観点でも、M&Aは活用されるでしょう。近年、IT化の影響で自社に製造業を取り込む動向が見られています。関連企業を自社に取り込む方法として、M&Aの動向・施策がさまざまな企業で見られます。
デメリット
売り手側
- 従業員・顧客の反発
- 売却先が見つからない可能性がある
上記の2点は、売却側のM&Aのデメリットです。
M&Aで大手企業の傘下に入ると、取引価格や契約条件、雇用条件が変更になる可能性があります。それに伴いこれまで関係を築いていた顧客が離れる可能性があるでしょう。同様に従業員が退職するリスクもあります。M&A実施にあたり、顧客とのすりあわせや交渉相手との従業員の雇用確保の交渉が必要となるでしょう。
タイミングや自社の企業価格・評価によっては、売却先が見つからない可能性もあります。
買い手側
- 売却企業の顧客を引き継げない可能性
- ノウハウを承継できない可能性
上記の2点は、買収側のM&Aデメリットです。
先述した売却企業が大手企業に入ることで契約や雇用が変わる観点から、買収をしても買収先の顧客が引き継げない可能性や、買収先の従業員が退職してノウハウを承継できない可能性があります。
リスクを慎重に検討してから、M&Aを実施するようにしましょう。
製造業界のM&Aの事例
製造業界のM&Aの成功事例を紹介します。
M&A成功事例を知ることでそのような目的でM&Aが行われたか、どこ同士がM&Aを実施したのかなどを知ることができます。
自社のM&A動向確立や成功の参考にもなるため、ぜひM&A事例を活用しましょう。
ニデック(旧 日本電産)による三菱重工工作機械のM&A
最初に紹介する事例は、ニデック(旧 日本電産)による三菱重工工作機械のM&A事例です。
買い手のニデックは、PCやデータセンターで使用されるHDD用モータの製造販売や、スマートフォンの触覚デバイス、OA機器といった多岐にわたる開発製造を行っている会社です。
一方、三菱重工工作機械は、工作機械・切削工具とその関連製品に関する設計・製造・販売などの事業を手掛けています。
本事例のM&Aは、ニデックに工作機械事業を新設する目的で実施されました。ニデックが持つ技術は、三菱重工工作機械の技術とシナジーがあることから、さらなる事業発展につながるとして行われました。
オリンパスによるQuest Photonic Devices B.V.のM&A
続いて紹介する事例は、オリンパスによるQuest Photonic Devices B.V.のM&A事例です。
買い手のオリンパスは、精密機械の製造販売を手掛けています。一方、売り手のQuest Photonic Devices B.V.は、医療用蛍光イメージングシステムのリーディングカンパニーとして、ドイツで事業を展開していました。
本事例のM&Aは、オリンパスの国際的なメドテックカンパニーとしての成長、医療機器・医療経済に対する貢献を目的とした経営戦略として行われました。
ニデック(旧 日本電産)によるOKKのM&A
3つ目に紹介する事例は、ニデック(旧 日本電産)によるOKKのM&A事例です。
OKKは日本とタイで、工作機械の設計・製造・販売、技術指導などの事業を展開しています。
本事例のM&Aは、双方の技術補完および工作機械事業の発展におけるシナジー効果を期待して実施されました。
レンゴーによる永井鉄工のM&A
4つ目に紹介する事例は、レンゴーによる永井鉄工のM&A事例です。
買い手のレンゴーは、段ボール・製紙・軟包装などの製造・販売事業を展開しています。一方、売り手の永井鉄工は、製紙工場で使用されるワインダー・ロールの設計・制作を実施している事業です。
本事例のM&Aは、買い手の永井鉄工の経営安定化と、双方の技術力強化を図ったものとして実施されました。
あいホールディングスによるナノ・ソルテックのM&A
5つ目に紹介する事例は、あいホールディングスによるナノ・ソルテックのM&A事例です。
買い手のあいホールディングスは、耐震診断・耐震構造設計事業を展開しています。買い手のナノ・ソルテックは、半導体製造・検査装置の買い取りや修繕販売といった事業を展開しています。
本事例のM&Aは、双方の企業価値の向上を図り実施されました。
双日によるマリンフーズのM&A
6つ目に紹介する事例は、双日によるマリンフーズのM&A事例です。
買い手の双日は、民間航空機・防衛関連の代理店・リースを中心とした事業を展開しています。一方、売り手のマリンフーズは、水産加工食品の製造・加工・販売事業を展開しています。
本事例のM&Aは、消費市場のマーケットイン志向にこだわり、生活の豊かさと利便性を高める事業展開、双方の事業強化のために実施されました。
ブルドックソースによるサンフーズのM&A
7つ目に紹介する事例は、ブルドックソースによるサンフーズのM&A事例です。
買い手のブルドックソースは、家庭用・業務用のソースや調味料を製造販売しています。一方、売り手のサンフーズは、ソース・食酢を中心に製造販売している企業です。
本事例のM&Aは、ブルドックソースの事業基盤の安定化・事業成長の観点から実施されました。
文化シヤッターによるARCOのM&A
最後に紹介する事例は、2019年6月の文化シヤッターによるARCOのM&A事例です。
買い手の文化シヤッターは、シャッターの修理・メンテナンス事業を展開しています。一方、ARCOはオーストラリアでシャッターメーカーを営む事業です。
本事例のM&Aは、文化シヤッターの海外展開と双方の技術力のシナジー効果を期待して実施されました。
製造業界のM&Aを成功させるポイント
製造業界でM&Aを成功させるポイントを解説します。
計画的に準備を行う
M&Aに向けた計画的な行動をすることが成功のポイントです。
M&A実施には、多大な準備が必要です。売却するタイミングを見計らう必要もあります。M&A成功には、明確にいつ・どのタイミングでM&Aを実施するかの計画を立て、それに向けた事前の準備が必要になります。
例として後継者問題を抱えている場合、経営者が高齢になってからではM&Aで解決をしようにも行動がおろそかになったり、M&Aの準備が進まなかったりすることも想定できるでしょう。高齢化する前に承継の準備を済ませておくことが、M&Aを成功させられる可能性が高まるといえます。
情報漏えいに注意する
M&Aの成功には、情報漏えいには注意することも必要不可欠です。
情報漏えいは、自社の評価を下げる行為です。M&Aの相場算出で高い企業価格が算出されても、その信用を下げるに値する行為を行っては、買い手が見つからなくなるリスクがあります。
M&Aの交渉相手とのやり取りで情報漏えいのリスクもあるため、交渉相手と秘密保持契約を締結する対応を取りましょう。M&Aの成功のためには、企業の信用を損ねない心がけが必要です。
デューデリジェンスの徹底
M&A成功のために、デューデリジェンスを徹底的に行いましょう。
デューデリジェンスとは、買い手が売り手の企業調査を実施することをさします。売り手の税務・財務・会面の確認はもちろん、社内のトラブルや簿外債務の有無も事前にしっかりと確認しましょう。リスクを抱えたまま買収をすると、想定していない責任追及を求められたり、最悪裁判沙汰になったりする可能性もあります。
M&Aは、実施して成功ではなく、実施後に問題を生じさせずに事業発展させてはじめて成功だといえます。
専門家への相談
M&A成功には、M&A専門家への相談が必要不可欠です。
M&Aは、目的の確立・自社の強みと弱みの判断・アピールポイントの整理・企業価値の算出など、さまざまな準備が必要になります。交渉相手と探す手間もかかります。M&A専門家に相談すれば、それらの準備をすべてサポートしてくれるでしょう。
M&A実施にあたって必要な税務・財務面の専門知識も有しているため、それらの疑問も気兼ねなく相談できます。
M&A成功をさせた企業のほとんどは、M&A専門家に相談しています。その意味でもM&A成功には、専門家への相談が必要不可欠といえるでしょう。
製造業界のM&Aは専門家に相談しよう
製造業界のM&Aは、専門家や仲介会社に相談しましょう。
先述のとおり、M&Aにはさまざまな準備や知識が必要となります。しかし、M&A仲介会社に相談すれば、それらの全面的なサポートを受けられます。
M&A仲介会社は得意とする業種が異なるため、必ず製造業界を得意とする仲介会社に依頼しましょう。仲介会社は無料相談を実施している場合もあるため、さまざまな相談先の無料相談を実施し、費用対効果が高い相談先を選択するようにしましょう。
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