金属製品業界のM&A動向や売却・買収事例を紹介!M&A時のポイントも解説!
金属製品業界では、後継者不在の解決や技術の獲得を目指すためのM&Aが顕著です。本記事では、業界動向やメリット、売却価格相場の算出方法や過去事例を交えながら、金属製品業界のM&A動向を詳しく解説します。M&A実施時のポイントやM&A案件も紹介します。
目次
金属製品業界とは
まずは基本知識として、金属製品業界の特徴と業界の動向を解説します。
金属製品業界の特徴
金属製造業界は、金属の材料を加工し、顧客ニーズに合わせてあらゆる製品を製造する業界です。私たちの生活に必要な日用品や自動車部品など、幅広い製品を手掛けています。
熟練技術を持つ老舗製造会社もあれば、ITなど最新技術を駆使した製造会社もあるなど、製法や業態はさまざまです。日本のものづくりを支えている重要な業界の1つと言えるでしょう。
金属製品業界の業界動向
金属製品業界では、主に以下2つの動向が見られます。
- 業界動向①:アルミニウムの需要増加
- 業界動向②:生産拠点の海外移転
アルミニウムの需要増加
軽量な金属素材であるアルミニウムは、燃費の向上に効果的です。そのため、多くの自動車メーカーがアルミニウムを採用しており、需要も増加しています。電気自動車など高燃費の自動車製造には欠かせない素材なので、今後もアルミニウム需要は高まると予想されます。
また、リチウムイオン電池にも使用される素材なので、さらに需要増加に拍車をかける要因となるでしょう。
生産拠点の海外移転
また、物価高騰により生産拠点を海外に移すケースも見られるようになりました。現地で材料を調達する方が、コストを抑えられるためです。
ただ、物価高騰が長く続くと、事業存続が困難になる可能性があります。より収益性を高めるためには、他の企業で見られない技術を習得し、差別化を図る必要があるでしょう。
また、あらゆるニーズに対応し顧客の幅を広げることも重要なポイントです。
金属製品業界のM&A動向
ここでは、金属製品業界で見られる主なM&A動向を解説します。
- M&A動向①:後継者問題解決を目的としたM&Aの増加
- M&A動向②:技術獲得・事業拡大を目的としたM&Aも増加傾向
後継者問題解決を目的としたM&Aの増加
1つ目は、後継者問題の解決を目指すためのM&A動向が増加したことです。国内の中小企業の多くは、経営者高齢化の進行により、簡単に後継者が見つからない状況が生じています。
また、親族や役員・従業員に後継者候補がいるとは限りません。M&Aに成功すれば、新たな経営者のもとで会社事業を存続させられるので、後継者不在には効果的な対処法と言えるでしょう。
技術獲得・事業拡大を目的としたM&Aも増加傾向
2つ目は、技術獲得や事業拡大を目指すM&A動向が、増加傾向にあることです。
独自のノウハウや魅力なブランドを抱える企業は、それだけ収益も期待できます。自社だけの力でブランド確立を目指す場合、多くの時間と労力が必要です。
M&Aによって買収に成功すれば、売却側が持つ優れた技術やブランドを有効活用できるので、効率的に事業拡大につながるでしょう。
金属製品業界のM&A・売却・買収価格相場
ここでは、金属製品業界におけるM&Aの売却・買収相場について解説します。具体的な金額を知るためには、会社状況に合わせた計算が必要です。
M&A・売却・買収価格相場
金属製品業界のM&Aにおける一般的な売却・買収相場ですが、小規模なM&Aの場合、100万円~1,000万円程と言われています。ただ注意すべきポイントは、厳密な売却価格は事例ごとに異なるという点です。
例えば、独自の製品ブランドやノウハウを持つ会社なら、企業価値が高く評価されるので、結果的に売却価格がアップします。人材不足や経営悪化の状態なら、相場が低くなる可能性もあるでしょう。
M&Aの価格の決まり方
具体的な売却価格相場を把握するには、自社状況に合わせて企業価値を評価しなければなりません。企業価値評価(バリュエーション)は、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3種類の手法を用いるのが一般的です。
具体的な算出方法は、以下のリンクで解説しています。企業価値の算定には高度な知識が必要なので、M&A仲介会社に相談すると良いでしょう。
金属製品業界でM&A・売却・買収を実施するメリット
ここでは、金属製品業界でM&Aを実施するメリットを、売却側・買収側それぞれの視点から解説します。
売り手側
金属製品業界のM&Aにおける売却側のメリットは、以下の通りです。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用維持
- 買い手の技術の活用
- 個人保証からの解消
後継者問題の解決
先述した通り、M&Aは後継者問題の解決に効果的です。会社や事業の売却に成功すれば、廃業せずに事業を存続させられます。
後継者不在は、経営者の高齢化によって多くの企業で深刻化している問題です。廃業する場合、経営者はさまざまな負担を強いられます。
M&Aは、廃業を選ばずとも解決できる手段なので、一考の価値はあるでしょう。
従業員の雇用維持
経営者が廃業を選択すると、従業員の失業は避けられません。M&Aに成功すれば、新しい経営者のもとで会社を存続させられるので、従業員の生活は守られます。
ただ、あまりにも待遇が悪化すると、M&Aを実施した後で退職者が増えるおそれがあります。従業員の処遇については、当事者間交渉で明確にしておくことが、売却成功へのポイントです。
買い手の技術の活用
自社の力だけでは達成できない課題がある場合も、M&Aは有益です。
例えば、大手企業の傘下に入れば、大手グループの技術とノウハウを有効活用できます。スケールメリットも得られるので、業務効率化や収益化にもつながるでしょう。買収側とのシナジー効果が生まれれば、さらに飛躍できる可能性もあります。
個人保証からの解消
中小企業経営者は、多くの場合個人保証などの債務を抱えています。株式譲渡で経営権を移転すれば、原則新しい経営者に個人保証を引き継ぐことができるので、債務に追われるストレスから解放されるでしょう。
ただ、後継者の信用度によっては、直ちに個人保証を解消できない場合があります。また、個人保証の移転は自動で行われないので、手続きが必要です。
買い手側
金属製品業界のM&Aにおける買収側のメリットは、次の通りです。
- 優秀な人材の獲得
- 技術力の獲得
- シナジー効果の発揮
優秀な人材の獲得
一般的に、人材育成には多額の費用と時間が必要です。
しかし、M&Aで買収に成功すれば、売却側の優秀な人材を獲得できます。即戦力となる人材なので、育成コストを最小限に抑えながら、スピーディーに事業展開できるため、非常に効率的です。
ただし、事業譲渡など手法によっては、雇用契約の結び直しが必要になるので、注意してください。
技術力の獲得
金属製造業界など、ものづくりに関連する業界で競争力を高めるためには、高度な技術が必要です。M&Aによって、魅力的な技術を持つ企業を買収すれば、その技術を自社に取り込むことができます。
売却側の設備も活用できるので、設備建設にコストと労力をかける必要もありません。獲得した技術と自社の力を融合させることによって、収益向上も目指せるでしょう。
シナジー効果の発揮
自社の経営資源と、他社の経営資源がうまく融合すれば、シナジー効果が生まれます。上記で説明した通り、設備や技術などを相互活用することで、業務効率化や事業拡大に繋げられます。お互いに無い技術を持つ場合も、補完性が生まれるため、事業領域を拡大させられるでしょう。
ただし、シナジー効果を得るためには、方向性やニーズが合致した企業とM&Aを実施することが重要なポイントです。
金属製品業界のM&A実施時のポイント
ここでは、金属製品業界でM&Aを実施する際に留意したいポイントを、2つ紹介します。
- ポイント①:技術の権利関係の確認
- ポイント②:環境・安全面の配慮
技術の権利関係の確認
相手企業が保有する技術の権利関係を確認することが、大切なポイントです。
他の企業からライセンスを受けて使用している技術がある場合、条件によってはM&A後に契約を一方的に解除される可能性があります。この条項が盛り込まれている場合、M&A後に事業を続けてしまうと、権利侵害として損害賠償を請求されるリスクがあるので、注意してください。
環境・安全面の配慮
環境や安全面に配慮できているかの確認も重要なポイントです。
例えば、化学物質の使用によって環境被害を引き起こした場合、企業のイメージダウンは避けられません。
また、従業員の労災が頻繁に起こる場合も同様です。最悪の場合事業継続が困難になり、廃業リスクが高まるので、注意してください。
金属製品業界のM&A・売却・買収事例
ここでは、金属製品業界で過去に実施されたM&Aの売却・買収成功事例を4つ紹介します。公式発表のIR情報詳細については、各事例の下にあるリンクから参照できます。
- M&A成功事例①:フジオーゼックスによるマルヨシ製作所のM&A
- M&A成功事例②:アルコニックスによるソーデナガノのM&A
- M&A成功事例③:アルインコによるウエキンのM&A
- M&A成功事例④:アミタHDと大平洋金属の資本業務提携
フジオーゼックスによるマルヨシ製作所のM&A
金属製品の製造会社2社による成功事例です。買収側は、中期経営計画の一環としてM&Aを活用した事業拡大を積極的に進めており、今回のM&Aで金属ロールやシャフトなどの製造事業を拡大できると判断しました。
売却側 | マルヨシ製作所 (金属製品製造業、旋盤加工業) |
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買収側 | フジオーゼックス (金属製品製造業、自動車部品製造業、鋼材加工業等) |
スキーム(手法) | 株式譲渡 |
目的 | ・買収側における中期経営計画の一環 ・シナジー効果の創出 ・金属ロールやシャフト等の製造事業の拡大 |
時期 | 2023年5月 |
譲渡価格 | 非開示 |
アルコニックスによるソーデナガノのM&A
非鉄金属の総合商社が、金属製品製造会社を買収した成功事例です。買収側は、M&Aによって売却側の製品を獲得することで、多様な顧客ニーズに対応できる事業体制を構築できると判断しました。コスト面での競争力や生産性向上も見込んでいます。
売却側 | ソーデナガノ (金属製品製造業、金型設計製作、機械装置製造業等) |
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買収側 | アルコニックス (非鉄金属製品を中心とした総合商社、製品輸出入・販売事業) |
スキーム(手法) | 株式譲渡 |
目的 | ・さまざまな顧客ニーズに対応できる事業体制の構築 ・新たな商流の開拓 ・グループ各社における技術やノウハウの共有 ・コスト競争力や生産効率性の向上 ・シナジー効果創出による企業価値向上 |
時期 | 2022年11月 |
譲渡価格 | 88億3,700万円 |
アルインコによるウエキンのM&A
仮設機材製造を手掛ける企業と、金属製品製造会社の成功事例です。買収側は、売却側が持つコストダウンや付加価値向上のノウハウに注目しており、双方のノウハウが融合することで、製品製造や開発面でシナジー効果が生まれると判断しました。
売却側 | ウエキン (金属金型設計製作、金属プレス加工業) |
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買収側 | アルインコ (仮設機材の製造・販売、フィットネスマシンや介護用品の製造) |
スキーム(手法) | 株式譲渡 |
目的 | ・製造や製品開発部門におけるノウハウ共有 ・シナジー効果の創出による企業価値向上 |
時期 | 2021年11月 |
譲渡価格 | 非開示 |
アミタHDと大平洋金属の資本業務提携
リサイクル・環境事業を手掛ける企業と金属製品製造会社で、資本業務提携が実施された事例です。アミタHDは、中期3ヵ年計画の一環として、相乗効果を発揮できるパートナー探しを進めており、大平洋金属との提携によって目的達成に貢献できると判断しました。
提携企業① | 大平洋金属 (金属製品製造業、フェロニッケルの製練・スラグ製品の製造) |
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提携企業② | アミタHD (リサイクル事業、環境事業) |
スキーム(手法) | 資本業務提携 株式譲渡 |
目的 | ・両社が有する経営資源やノウハウの相互活用 ・シナジー効果の創出による企業価値最大化 |
時期 | 2021年4月 |
譲渡価格 | 20億4,372万円 |
金属製品業界のM&A案件一覧
最後に、金属製品業界のM&A案件を5つ紹介します。応相談の案件も多々あるので、気になるM&A案件がある場合は、お気軽にお問い合せください。
- M&A案件①:【業績拡大中/業歴50年以上/職人多数】金属メッキ加工業
- M&A案件②:【1円譲渡/高い技術力/優良設備保有】中部地方 非鉄・金属材料の切削加工業
- M&A案件③:【高利益率 /業歴40年以上】関東の金属機械部品の製造・加工
- M&A案件④:【首都圏/保有設備多数あり】金属部品加工業
- M&A案件⑤:【老舗 / 商材評価高】 自動車金属部品製造・加工業
【業績拡大中/業歴50年以上/職人多数】金属メッキ加工業
中国・四国エリアを事業拠点とする、金属メッキ加工会社のM&A案件です。50年以上の業歴があり、長年培った熟練技術を保有しています。後継者不在と事業存続への不安から、M&A先を探している状況です。手作業加工なので、幅広い顧客ニーズ(メインは法人顧客)に対応できるという強みがあります。
エリア | 中国・四国 |
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従業員数 | 20人以下 |
譲渡対象の資産 | 法人(株式) |
譲渡理由 | 後継者不足による事業承継 事業存続への不安 事業発展 |
譲渡希望の時期 | 6ヶ月以内 |
事業内容 | 工作機械や産業用機械部品の金属メッキ加工 |
希望価格 | 3,000万円以上 ※応相談 |
【1円譲渡/高い技術力/優良設備保有】中部地方 非鉄・金属材料の切削加工業
中部・北陸エリアを拠点とする、非鉄・金属材料切削加工会社のM&A案件です。赤字経営にあり、1円での譲渡を希望しておりますが、高い技術力を持ち、多数の実績を保有しています。後継者不在のため、M&Aの相手企業を探している状況です。高速ICの近くなので、立地にも魅力があります。
エリア | 中部・北陸 |
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従業員数 | 10人以下 |
譲渡対象の資産 | 法人(株式) |
譲渡理由 | 後継者不足による事業承継 |
譲渡希望の時期 | 3ヶ月以内 |
事業内容 | 非鉄・金属材料の切削加工 |
希望価格 | 1円 |
【高利益率 /業歴40年以上】関東の金属機械部品の製造・加工
関東・甲信越エリアを拠点とする、金属機械部品製造会社のM&A案件です。主に大型金属機械部品の製造を手掛けている会社で、旋盤やマシニング、研磨といった設備を保有します。40年以上の実績があり、競合他社が少ないことから、高利益率を実現できるという点が強みです。現在後継者不在の問題の状況にあり、M&Aを検討しています。
エリア | 関東・甲信越 |
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従業員数 | 50人以下 |
譲渡対象の資産 | 法人(株式) |
譲渡理由 | 後継者不足による事業承継 |
譲渡希望の時期 | 特になし |
事業内容 | 大型金属部品製造・加工 |
希望価格 | 3.6億円 ※応相談 |
【首都圏/保有設備多数あり】金属部品加工業
関東・甲信越エリアを拠点とする、金属部品加工会社のM&A案件です。半導体やOA機器など小物機器を中心に、さまざまな顧客ニーズに対応した製品を製造できます。高い技術を保有しており、複雑な加工でも対応できるという点や、多くの設備を保有しているという点が強みです。現在、会社は後継者不在の状況にあり、半年以内の事業承継を希望しています。
エリア | 関東・甲信越 |
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従業員数 | 20人以下 |
譲渡対象の資産 | 法人(株式) |
譲渡理由 | 後継者不足による事業承継 |
譲渡希望の時期 | 6ヶ月以内 |
事業内容 | 半導体・OA機器・ATM・医療・ドローンなどの部品製造 |
希望価格 | 6,000万円 ※応相談 |
【老舗 / 商材評価高】 自動車金属部品製造・加工業
近畿エリアを拠点とする、自動車金属部品製造会社のM&A案件です。主に、転造や歯切、研削で動力伝達部品を製造しています。大手企業向けの製品を手掛けており、中国法人の業績も好調です。会社は後継者不在の状況にあり、半年以内の事業承継を希望しています。
エリア | 近畿 |
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従業員数 | 50人以下 |
譲渡対象の資産 | 法人(株式) |
譲渡理由 | 後継者不足による事業承継 |
譲渡希望の時期 | 6ヶ月以内 |
事業内容 | 自動車金属部品の製造・加工 |
希望価格 | 3億円 |
金属製品業界のM&Aを成功させるには専門家に相談しよう
金属製品業界は、後継者問題の解決や技術獲得を目的としたM&A動向が多く見られる業界です。物価高騰が進む中で生き残るためには、各企業は独自の技術やノウハウによって、製品の付加価値向上を目指す必要があります。M&Aは相手企業の技術を有効活用できるため、効果的な手段の1つです。M&Aを検討される際は、一度M&A仲介会社など専門家への相談をおすすめします。
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