鉄骨工事会社のM&Aの売却事例をチェック!注意点や相場の金額は?
鉄骨工事会社は、将来予想される需要減少や競争の激化、後継者問題に対処すべく多くの企業でM&Aが行われています。本記事では、鉄骨工事会社が過去に実施したM&Aの売却・買収事例に触れながら、業界内のM&A事情について解説します。
目次
鉄骨工事会社とは?
まず、基本的知識から押さえましょう。今回のメインキーワードである「鉄骨工事会社」とは、主にどのような業務を行う企業なのでしょうか。
鉄骨工事会社の定義・業務内容を踏まえた上で、業界の現状を解説します。
鉄骨工事業界の定義
鉄骨工事会社とは、主に建設現場の鉄骨工事を担当する企業です。
一般的に建設会社に分類され、総合建設会社(ゼネコン)から下請けとして鉄骨工事を受注して業務を行います。
もちろん、鉄骨工事会社は下請けだけではありません。
中には、建設会社自体に鉄骨工事部門が存在し、自社完結で建設業務にあたるケースもあります。
鉄骨工事会社の現状
鉄骨工事業界では、東日本大震災や東京オリンピックにおけるインフラ需要増加の影響で需要が増加しました。
ただし、これらは継続的に需要が増えるとは考えにくい要素です。受注分の建設が完了すればその後の需要が下がる可能性があります。
大きな建物の需要が減ってきていることを考慮すると、それに伴い鉄骨工事の受注も減ることになるでしょう。
物価高騰や競争激化も影響し、規模に関係なく鉄骨工事会社の倒産事例が増えているのも現状です。
鉄骨工事会社のM&Aの現状・動向
鉄骨工事業界では、多くの企業が需要縮小や競争激化に対処しなければならない状況にあります。
そこで注目されているのが、M&Aによる売却・買収です。
鉄骨工事の業界では、M&Aで現状打破を図ろうとする事例が見られるようになりました。
ここでは、鉄骨会社で行われることが多いM&Aの方法・現状を確認しましょう。
国内から海外への需要を求めたM&Aが増加
鉄骨工事業界では、国内から海外への需要を求めて国際的なM&Aを行うケース・事例が増えているのが特徴です。
鉄骨工事を含め、日本の工事技術は世界で高く評価されているので、海外も技術獲得を目的にM&A先企業を探しているケースが多く見られます。
日本国内で需要が落ち込んだときのリスク回避にもなるので、海外企業とのM&Aは有効な施策といえるでしょう。
異業種・他業種へのM&A
異業種・他業種とのM&Aも多く実施されています。
将来的な需要縮小を考えると、鉄骨工事に固執せず事業範囲を増やした方が収益面のリスクを軽減できるでしょう。
同業種のM&Aでも相乗効果が期待できます。しかし、あらゆる可能性を想定し、幅広い視点でM&Aを検討することが重要なポイントです。
廃業を選択する企業も増えている
もちろん、鉄鋼工事業界では、すべての企業がM&Aを成功させているわけではありません。
中にはやむを得ず、廃業を選択する鉄骨工事会社も増加しています。
ただし、注意点として、廃業に費用がかかる点や従業員の雇用が失われてしまう点を経営者は考慮しなければなりません。
鉄骨工事会社のM&Aの事例
ここでは、鉄骨工事会社で過去実際に行われた売却・買収事例を9つ紹介します。
各企業はどのような狙いでM&Aを実施したのか、注目しながら各事例をチェックしましょう。
より詳しいIR情報は、各事例下の部分に掲載のリンクから確認できます。
小野建による森田鋼材のM&A
売却企業 | 森田鋼材 (鉄筋コンクリート用異形棒鋼加工・販売・施工) |
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買収企業 | 小野建 (鉄鋼・建材商社) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 技術とノウハウの獲得 顧客の獲得 付加価値の高いサービス提供 地域に密着した事業展開 |
実施時期 | 2019年10月 |
瀧上工業によるケイシステックニジューサンのM&A
売却企業 | ケイシステックニジューサン (自動車用部品組付機の設計・製作) |
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買収企業 | 瀧上工業 (橋梁・鉄骨・鉄塔・鋼構造物設計・製作・施工) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 事業ポートフォリオの拡大 事業多角化 |
実施時期 | 2018年6月 |
小野工業所と博陽工業の資本提携
売却企業 | 博陽工業 (鉄骨ファブリケーター) |
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買収企業 | 小野工業所 (東北地方を中心としたインフラ建設・維持・修繕事業) |
M&Aの手法 | 資本提携 |
M&Aの目的 | 後継者問題の解決 高品質な鉄骨の供給 グループ内のシナジー効果創出 |
実施時期 | 2019年2月 |
旭化成ホームズと中央ビルト工業の資本業務提携
売却企業 | 中央ビルト工業 (仮設足場製造事業、住宅用鉄骨部材製造・受託事業) |
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買収企業 | 旭化成ホームズ(旭化成グループ) (住宅建設業) |
M&Aの手法 | 資本業務提携 (発行済株式および第三者割当増資:約11億5,000万円分取得) |
M&Aの目的 | 住宅用鉄骨部材の生産体制強化 金属加工ノウハウ共有によるコストダウン 競争力強化 |
実施時期 | 2017年2月 |
エスイーによる森田工産のM&A
売却企業 | 森田工産 (鳥取県を拠点とする鉄骨工事業) ※M&A後に有限会社から株式会社に商号変更 |
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買収企業 | エスイー (建設用資機材の製造・販売) |
M&Aの手法 | 株式譲渡(約2億3,000万円) |
M&Aの目的 | グループ内のシナジー効果創出 事業拡大 |
実施時期 | 2015年3月 |
丸藤シートパイルによるディ・ケイ・コムのM&A
売却企業 | ディ・ケイ・コム (ソイル柱列連続壁・地中障害撤去工事) |
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買収企業 | 丸藤シートパイル (鉄骨・加工・打込・引抜工事) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 高い技術力と施工技術を生かしたシナジー効果の創出 |
実施時期 | 2017年9月 |
ナガワによるOY CORPORATION LTD.のM&A
売却企業 | OY CORPORATION LTD. (タイの鉄骨系建築会社) |
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買収企業 | ナガワ (建設資材販売・リフォーム・土木工事・各種工事など) |
M&Aの手法 | 株式譲渡(約1億円) |
M&Aの目的 | 人員体制拡大 財務基盤の安定化 技術交流・協業による技術・施工能力向上 |
実施時期 | 2017年11月 |
阪和興業によるブリヂストン化工品ジャパンからの一部事業の承継
売却企業(分割会社) | ブリヂストン化工品ジャパン (国内の産業資材・インフラ資材・工業用ゴム製品販売・施工) |
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買収企業(承継会社) | 阪和興業 (鉄鋼・金属原料・非鉄金属・木材・機械など各種商品販売、 鋼材加工、非鉄金属加工など) |
M&Aの手法 | 会社分割(冷蔵倉庫用の防熱工事事業を約7,000万円で取得) |
M&Aの目的 | 鉄骨・屋根部屋工事とのシナジー効果創出 防熱工事事業の収益化 事業規模の拡大 |
実施時期 | 2018年4月 |
コンドーテックとエヌパットの資本業務提携
売却企業 | エヌパット (建築用金物の製造・販売) |
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買収企業 | コンドーテック (鉄骨建築で使用する耐震用筋交い、建築、 インフラ関連資材の卸売業など) |
M&Aの手法 | 業務資本提携 株式譲渡(発行済株式5%を取得) |
M&Aの目的 | 付加価値の高い製品の販売網拡大 企業価値の向上 |
実施時期 | 2018年2月 |
鉄骨工事会社のM&A・売却の費用相場
上記では9つのM&A事例を紹介しましたが、鉄骨工事業界で実際に売却する際はどの程度の費用相場を見込めば良いのでしょうか。
M&Aにかかる費用相場は、経営者が計画を立てる上で特に気になる項目です。
ここでは、鉄骨工事会社におけるM&Aの売却費用相場と企業価値算出方法を紹介します。
売却における費用相場
売却における費用相場としては、一般的に数千万円から数億円程度といわれています。
ただし、注意点があります。鉄骨工事業界のM&Aには、これ以上具体的な売却価格相場がありません。
企業価値や事業内容、規模、期待されるシナジー効果の大きさによって相場が異なるためです。
企業価値は相場に大きな影響を与えるため、正しく算出する必要があります。
企業価値の算出方法
売却費用相場に必要な企業価値算出には、以下の3通りの方法があります。
これらのアプローチは、鉄骨工事業界に限らず他の業種も共通です。
マーケットアプローチ | 市場で取引されている類似事例から価値を評価する方法 |
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コストアプローチ | 貸借対照表に記載された純資産から価値を評価する方法 |
インカムアプローチ | 将来見込まれる収益・キャッシュフローから評価する方法 |
相場算出にかかる企業価値の評価は専門知識が必要なため、M&A仲介会社のサポートを得ながら進めることをおすすめします。
鉄骨工事会社のM&Aを成功させるポイント
ここでは、鉄骨工事会社におけるM&Aを成功させるために知っておきたいポイントを紹介します。
より効果的なM&Aに近づけるため、以下の3つの項目に留意した上で手続きを進めましょう。
- 自社の強みをアピールする
- 権利・特許・技術などを持つ
- 専門家に相談する
自社の強みをアピールする
成功させるポイントの1つ目は、自社の強みをアピールすることです。
M&Aは相手企業とマッチングしなければ、プロセスを進められません。
相手企業が魅力的に感じるためには、明確に強みをアピールする必要があります。
事前に、自社のアピールポイントを客観的に把握し資料にまとめておくことをおすすめします。
権利・特許・技術などを持つ
成功させるポイントの2つ目は、権利や特許、技術を保有することです。
一般的に取得するのが難しい特許が多ければ多いほど、売却価格がアップします。
この他、従業員の技術や鉄骨工事実績の積み重ねも重要です。
客観的に把握しやすいデータなので、こちらもアピールポイントとして資料にまとめると良いでしょう。
専門家に相談する
成功させるポイントの3つ目は、専門家に相談することです。
M&Aは、鉄骨工事業界に限らず税務や法務といった専門知識が多くの場面で求められます。
個人で進めるとマッチングに苦戦したり、予期しないトラブルが発生したりするので、おすすめできません。
経験豊富なM&A仲介会社に相談・依頼しながら、プロセスを進めましょう。
鉄骨工事会社のM&Aを行う際の注意点
ここでは、鉄骨工事会社のM&Aにおける注意点を紹介します。
今回紹介する主な注意点は以下の4つです。準備や目的設定、情報公開のタイミングといった細かいポイントに留意しながら手続きを進めましょう。
- 計画的に準備をする
- M&Aの目的を明確に
- 明確にした目的を踏まえてM&A先の選定を行う
- M&Aが成立するまで情報公開をしない
計画的に準備をする
1つ目の注意点は、計画的に準備することです。
円滑かつ円満な売却・買収を実現させるためには、早い段階から準備を進める必要があります。
後継者問題や財政難が起きてからでは、相手企業が見つからず廃業せざるを得ない可能性もあります。
将来を考え、経営状態が比較的安定しているときに計画を立て始めるのがポイントです。
M&Aの目的を明確に
2つ目の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。
自社において、具体的にどのような効果を得るために売却・買収を行うのか決めましょう。
漠然とした状態でM&Aを進めると労力がかかるだけで、かえって損失になるかもしれません。
当事者双方に有益なマッチングになるように、目標を必ず設定しましょう。
明確にした目的を踏まえてM&A先の選定を行う
3つ目の注意点は、目標を踏まえてM&A先を選ぶことです。
マッチングできたからといって、M&Aが成功するとは限りません。
ニーズがマッチした相手企業でなければ、期待通りの相乗効果を得るのは難しいでしょう。
そのためにも、上の注意点で紹介した目標の明確化は非常に重要です。
M&Aが成立するまで情報公開をしない
4つ目の注意点は、M&Aが成立するまで情報公開を行わないことです。
多くの場合、M&Aは秘密保持契約書を取り交わして手続きを進めます。
途中で情報漏えいがあると、従業員や取引先が動揺してしまう可能性があるからです。
最悪の場合、M&Aに困惑した従業員が退職し、鉄骨工事に携わる貴重な人材が失われるかもしれません。
無事手続きが落ち着き、正しいタイミングで告知することがポイントです。
鉄骨工事会社のM&Aを検討する際は専門家に相談しよう
鉄骨工事会社では、将来的な需要減少や競争激化に備えて国内外の企業とM&Aを行うケースが多く見られます。
廃業で鉄骨工事技術や人材を失うのは、会社経営者としても業界全体としても避けたいところではないでしょうか。
今回紹介した過去のM&A事例やポイント・注意点を踏まえ、M&A仲介会社のサポートも得ながら着実に準備を進めましょう。
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