事業譲渡・会社売却が増加している理由は?買収側と売却側別に徹底調査!
地方の中小企業など多くの企業で事業譲渡や会社売却の活用事例が増加していますが、これはどのような理由によるものなのでしょうか。本記事では、事業譲渡・会社売却が増加する主な理由を、過去のM&A事例とともに詳しく解説します。成功へのポイントも押さえましょう。
目次
事業譲渡・会社売却が増加している理由
事業譲渡や会社売却は、経営上の問題や将来的な成長などさまざまな理由から各企業で検討・実施されています。まずは、多くの業界で譲渡・売却が増加する主な理由を6つ確認しましょう。
- 増加の理由①:経営者の高齢化
- 増加の理由②:後継者の不足
- 増加の理由③:創業者利益の獲得
- 増加の理由④:M&A・事業譲渡・会社の売却が目的
- 増加の理由⑤:事業売却後に新規事業への参入
- 増加の理由⑥:社員の雇用継続
経営者の高齢化
事業譲渡や株式譲渡を実施する企業が増加する大きな理由となっているのが、経営者の高齢化です。引退後後継者が見つからず、第三者の事業承継先を考えるケースが増えています。
特に地方の中小企業では、経営者の高齢化が顕著です。会社の廃業を選ぶ方法もありますが、経営者としては、培ってきた事業を絶やしたくないというのが本音ではないでしょうか。
後継者の不足
経営者に親族が居れば後継者候補になり得ますが、必ずしも後を継いでくれるとは限りません。働き方の多様性が尊重される現代社会では、後継者の確保が困難になりつつあります。
知らない企業に事業譲渡・会社売却するのは気が進まないと考える経営者は少なくありませんが、廃業よりはメリットが多いことを理由にM&Aを視野に入れるケースが見られます。
創業者利益の獲得
創業者が利益を得る理由で事業譲渡や会社売却を実施するケースもあります。得た資金を引退後の生活費に活用すれば、ハッピーリタイアを目指すこともできるでしょう。
※ハッピーリタイアとは、引退後の資金を確保して豊かな老後生活を送ることを言います。
M&A・事業譲渡・会社の売却が目的
課題が無くても、事業拡大や業容拡大を理由としてM&Aを実施するケースもあります。大手の傘下に入ることでスケールメリットが得られるので、戦略の一環として行う企業もあるでしょう。
ただ、M&A後の事業方針を正しく設定しないと効果が得られません。過去に成功を収めた事例では、当事者企業は綿密な戦略と計画のもと事業譲渡・会社売却を実行しています。
事業売却後に新規事業への参入
経営者がまだ事業に挑戦したい場合も、事業譲渡や会社売却は効果的です。事業譲渡や会社売却で受け取った対価(売却益)を新規事業への投資として必要な資金を調達することができます。
新規事業には設備の建設や人材確保、技術者の教育といった面でかなりの資金が必要です。事業譲渡・会社売却を実施すれば、経営者はコストを抑えた状態で効率よく事業参入できるでしょう。
社員の雇用継続
経営者は事業継続が難しい場合、会社の廃業を視野に入れることができますが、そうなった場合従業員の失業は避けられません。技術や人材を存続させる方が良いと考える経営者は多いでしょう。
従業員にも個々の生活があるわけですから、それを守るという理由で事業譲渡や会社売却を視野に入れるのは、経営者にとって有益と言えるでしょう。
経営者が事業譲渡・会社売却をする理由(買い手側)
事業譲渡や会社売却の買収側企業は、主に以下のような理由でM&Aを実施するのが一般的です。それぞれ詳しく解説します。
- 買収側の理由①:既存事業の強化
- 買収側の理由②:新規事業への参入
- 買収側の理由③:シナジー効果による企業価値の向上
既存事業の強化
買い手側企業が保有する事業の強化を考えている場合、同じ事業を強みとする企業を買収することで技術とノウハウを獲得できます。これを既存事業に活用すれば、効率的に事業強化が狙えるでしょう。
新規事業への参入
事業多角化で収益減少リスクに備える企業は少なくありません。ただ新事業に参入するには多額の投資が必要です。その事業を行う会社を買収すれば、資源を新規事業に活用できるので効率的と言えます。
シナジー効果による企業価値の向上
売却側企業の事業と補完性がある場合、事業譲渡や会社売却でシナジー効果を得ることができます。未開拓エリアや他分野技術を獲得すれば収益性も向上し、企業価値をアップさせられるでしょう。
経営者が事業譲渡・会社売却をする理由(売り手側)
では次に、売却側企業が事業譲渡・会社売却を行う理由を抑えましょう。売却側は経営上の問題や経営者の健康上の問題だけでなく、会社成長を見込んだ前向きなケースもあります。
- 売却側の理由①:後継者不在
- 売却側の理由②:早期リタイア
- 売却側の理由③:健康の問題
- 売却側の理由④:別事業へのシフト
- 売却側の理由⑤:会社を成長させるため
- 売却側の理由⑥:企業の再生
後継者不在
事業譲渡・会社売却を実施する理由として売却側で特に多いのが、後継者問題によるものです。冒頭の部分でも触れましたように、地方企業は後継者が見つかりにくい状況にあります。
事業譲渡や会社売却をすることで、経営者自身は引退しながらも第三者の傘下で会社を存続させることができます。
早期リタイア
経営者が早く引退を考えている場合も、事業譲渡や会社売却が行われるケースがあります。会社経営のストレスから解放され、引退後の生活を悠々自適に暮らしたいと考える経営者も居るでしょう。
必ずしも高齢の経営者に限らず、若手の経営者でも事業譲渡や会社売却を行うケースは多々あります。
健康の問題
経営者に健康上の問題を理由に、事業譲渡や会社売却が行われる場合があります。
現時点で経営者が健康な状態でも、今後病気が確実に発生しないとは言えません。事業譲渡・会社売却の計画を立てリスクに備えておけば、負担をかけずに事業存続できるでしょう。
別事業へのシフト
別の事業に注力する際は、事業譲渡が有効です。多事業を抱える企業の場合、収益性の無い事業を売却すれば、対価を得られるだけでなく、主力事業に時間と労力を費やすことができるでしょう。
さらには事業譲渡で売却した対価を別の事業に充てることもできるので、会社の成長を加速させることができます。
会社を成長させるため
会社成長を目指して事業譲渡・会社売却を検討する場合もあります。売却はマイナスな理由だけで行われるものではありません。他社と協業し存在感を強固なものにするなど前向きな理由でも行われます。
企業の再生
経営不振が続く場合、第三者に経営を任せ企業再生を目指す理由でも事業譲渡・会社売却は実施されます。例えば大手傘下に入ることでより経営を安定させることができるでしょう。
事業譲渡・会社売却のメリット・デメリット
事業譲渡や会社売却は、廃業を選ぶよりも多くの恩恵が得られると言われていますが、具体的にどのような点が挙げられるのでしょうか。また、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
事業譲渡・会社売却のメリットとデメリットを買収側・売却側の視点別に解説します。
メリット
最初に事業譲渡や会社売却で得られるメリットを確認しましょう。手法に応じて異なるメリットも存在します。
買い手側
事業譲渡を実施する場合、買収側は主に以下のようなメリットが得られます。
- 事業譲渡では売却側の債務・負債を引き継ぐ必要がない
- 事業譲渡の場合必要な事業だけを引き継げる
- 株式譲渡なら許認可も引き継げる
事業譲渡は株式譲渡とは異なり、負債を引き継ぐ必要はありません。売却側企業の簿外債務(貸借対照表に計上されていない負債)を心配することなく事業を引き継げるのが大きなメリットです。
売り手側
事業譲渡を実施する場合、売却側は主に次のようなメリットが得られます。
- 事業譲渡なら法人格を残せる
- 事業を存続させられる
- 後継者不在の問題を解決できる
株式譲渡とは異なり、法人格を残すことができるので廃業の心配がありません。長年培った技術も売却先で活かせるだけでなく、買収側とのシナジー効果が得られる可能性もあります。
デメリット
では次に、事業譲渡・会社売却を実施する際に留意すべきデメリットを押さえましょう。
買い手側
事業譲渡を実施する場合、買収側は主に以下ようなデメリットが想定されます。
- 事業譲渡では従業員と再契約を結ばなければならない
- 事業譲渡の場合許認可を再取得する必要がある
- 株式譲渡では売却側の債務も引き継がれる
- 必ずしもシナジー効果が得られるとは限らない
技術を持った従業員は事業展開に重要ですが、個別に契約をし直さなければなりません。状況によってはこの際に退職を選択する従業員が出る可能性があるので、人材面のリスクが考えられます。
また、事業の許認可についても再取得する必要があり、申請から認可を得るまでに時間がかかる場合があるでしょう。
売り手側
事業譲渡を実施する場合、売却側は主に以下ようなデメリットが想定されます。
- 株式譲渡に比べ手続きが煩雑
- 取引先との関係が悪化するリスクがある
- 従業員が退職するおそれがある
事業譲渡を実施する場合、各事業ごとに手続きを進めなければなりません。会社ごと経営権が移転する株式譲渡よりも労力がかかる点が大きなデメリットです。
また、途中で事業譲渡の話を聞いた従業員が不安に思い退職することがないように情報管理を徹底する必要があります。
事業譲渡・会社売却の事例
過去実施された事業譲渡・会社売却の主な事例を6つ紹介します。当事者企業が掲げた理由は事例ごとに異なります。この点に注目しながら過去事例を確認しましょう。
※公式で発表されているIR資料は、事例の下に掲載しましたリンクから参照ください。
- 事例①:パイオニア
- 事例②:コスミックダイニング
- 事例③:アットフリーク
- 事例④:エイチアイ
- 事例⑤:ミチ
- 事例⑥:オンキヨーホームエンターテイメント
パイオニア
売却企業 | パイオニア(対象子会社:東北パイオニア) (オーダーメイド各種自動化生産設備、高精密流量計測装置製造) ※山形県天童市 |
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買収企業 | デンソー (自動車部品・システム製造販売、 産業関連機器、生活関連機器の製造販売 ) ※愛知県刈谷市 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・カーエレクトロニクスへの経営資源の集中 ・買収側傘下におけるFA(生産自動化)事業の拡大 |
実施時期 | 2018年9月 |
譲渡価格 | 109億円 |
コスミックダイニング
売却企業 | コスミックダイニング (冷凍食品製造・販売) ※群馬県前橋市 |
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買収企業 | アークランドサービスホールディングス (とんかつ専門店「かつや」チェーン運営事業) ※東京都千代田区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・双方のノウハウ結集 ・新たな事業拡大 ・事業成長や価値向上 |
実施時期 | 2020年5月 |
譲渡価格 | 非開示 |
売却企業 | アットフリーク (サイト制作、システム開発、Web マーケティング) ※東京都葛飾区 |
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買収企業 | クリエイト (求人サービス提供事業、社員教育事業、営業広告・メディア事業) ※東京都千代田区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・人材と経験不足の補完 ・営業面の強化 ・協業によるシナジー効果の創出 |
実施時期 | 2017年9月 |
譲渡価格 | 非開示 |
エイチアイ
売却企業 | エイチアイ (ミドルウェア企画・開発、コンテンツ企画・制作・運用事業) ※東京都新宿区 |
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買収企業 | ミックウェア (カーナビ・車載プラットフォーム・位置情報サービス事業) ※兵庫県神戸市 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・両社の連携 ・付加価値を高めた新技術やサービスの創出・提供 ・実績や経験・ノウハウの活用 |
実施時期 | 2021年2月 |
譲渡価格 | 4億5,000万円 |
ミチ
売却企業 | ミチ (ネイルチップの販売) ※東京都三鷹市 |
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買収企業 | 丸井織物 (合繊織物メーカー、合繊織物・合繊資材織物製造) ※石川県中能登町 |
M&Aの手法 | 事業譲渡 (対象事業:ネイルチップ販売サイト「ミチネイル」事業) |
M&Aの目的 | ・両社事業のシナジー効果創出 ・利用者の選択肢を広げることで事業拡大を期待 |
実施時期 | 2019年7月 |
譲渡価格 | 非開示 |
オンキヨーホームエンターテイメント
売却企業 | オンキヨーホームエンターテイメント (老舗音響機器メーカー) ※大阪府東大阪市 |
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買収企業 | ・PREMIUM AUDIO COMPANY (米音響機器大手VOXXの子会社) ※アメリカ企業 ・シャープ (電機メーカー大手) ※大阪府堺市 |
M&Aの手法 | 事業譲渡 (対象事業:ホームAV事業) ※ONKYOのブランド名は維持される |
M&Aの目的 | ・売却側の債務超過の解決のため ・悪化した財務状況の改善 |
実施時期 | 2021年9月 |
譲渡価格 | 約33億円 |
事業譲渡・会社売却を成功させるポイント
一般的に事業譲渡や会社売却は多くの労力とリスクが伴うので、実施するからには少しでも成功に近づけたいというのが経営者の本音ではないでしょうか。
ここでは、事業譲渡・会社売却を成功させるために留意すべきポイントを5つ解説します。
- 成功へのポイント①:譲渡・売却目的を明確にする
- 成功へのポイント②:好調なときに譲渡・売却する
- 成功へのポイント③:自社の強みと弱みを理解する
- 成功へのポイント④:譲渡・売却先の会社を見極める
- 成功へのポイント⑤:M&Aの専門家に相談する
譲渡・売却目的を明確にする
成功へのポイント1つ目は、目的や理由を明確にすることです。事業譲渡・会社売却で多くの効果を得るためには、課題点を明らかにして方向性が合致した企業と取引する必要があります。
周りでM&A事例が増加したからといって、理由もなく売却を行うのはおすすめできません。自社状況を分析し、問題点を明確にした上で相手企業を選びましょう。
好調なときに譲渡・売却する
成功へのポイント2つ目は、経営が好調な時に譲渡・売却を実施することです。経営が安定した会社は企業価値が高く、譲渡価格もアップします。逆に問題点が多いとマッチングに苦戦するでしょう。
自社の強みと弱みを理解する
成功へのポイント3つ目は、自社の強みと弱みを理解することです。自社の過去の実績を振り返り、問題点と相手企業へのアピールポイントとなる点を資料にまとめましょう。
問題点と強みとなる点が明確な企業はM&A後の想定がしやすくなるので、事業譲渡や会社売却の相手候補に挙げられやすくなります。
譲渡・売却先の会社を見極める
成功へのポイント4つ目は、譲渡・売却先を見極めることです。ただ売却するだけでなく、売却後に求めた効果や事業成長が見込めるか考える必要があります。
理念や従業員をしっかり引き継いでくれる企業かを入念に確認しましょう。ミスマッチを防ぐためにはトップ会談を重ね、M&Aの理由や理念など相互理解を深めておくことが重要です。
M&Aの専門家に相談する
成功へのポイント5つ目は、M&Aの専門家に相談することです。事業譲渡・会社売却には法務や税務を始めとする専門知識が求められるため、個人で進めるのはおすすめできません。
知識が豊富なM&A仲介会社などプロフェッショナルの助言を得ながら、トラブルの少ない円滑な手続きを目指しましょう。
事業譲渡・会社売却を検討中なら専門家に相談しよう
事業譲渡・会社売却は、売却側の後継者不在の解決や経営上の問題解決、買収側は事業参入や事業拡大を理由として実施されます。
より効果を得るためには、売却側は経営が安定した頃から計画を練ることが重要です。また、買収側はシナジー効果が多く見込める企業の選出が求められます。
円滑かつ円満なM&Aの成功には、知識豊富な専門家のサポートが欠かせません。M&A仲介会社に相談・依頼し、多くの効果が得られる事業譲渡・会社売却を目指しましょう。
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