地方の会社売却は増加傾向にある?現状や今後の動向まで徹底調査!
地方の会社売却は、都市部の会社売却のようにうまく進められるのでしょうか。この記事では、地方における会社売却の現状と、課題を踏まえながら今後の動向を解説します。地方における会社売却の相談先、成功へのカギもあわせて確認しましょう。
目次
会社売却とは
会社売却という言葉がさまざまな場所で見られるようになりました。経営者の方であれば幾度となく耳にしているかもしれません。
都市部の大手企業の話だと思ってしまいがちですが、地方でも会社売却という言葉は当たり前になってきました。
地方の会社売却は現状と、今後の動向はどうなっているのでしょうか。会社売却の意味を踏まえながら解説します。
会社売却の意味
会社売却とは一般的に、会社の資産や事業、株式などを売却することです。
会社売却によって、売り手側が売却時の利益を獲得でき、買い手側は資金や事業を拡大できるのが主なメリットです。
地方の会社売却の現状と動向
地方の会社売却の現状と動向を、売り手と買い手それぞれの視点から確認します。
地方の会社売却の動向(売り手)
地方の会社売却の現状としては、事業や資源の活用や後継者確保などの理由から経営者が売り手になる傾向があります。
地方の会社売却の動向(買い手)
都市部の大企業が自社の事業拡大を主な理由として買い手となり、地方の会社売却を検討する動向があります。
都市部の場合相談から会社売却の実施までを行いやすい環境にあるので、地方企業は売り手となるケースが多く見られます。
地方の会社売却は増加傾向にある?
会社の後継者不足が次第に広がりつつある地方では、会社売却を検討せざるを得ないのが現状です。
そういった理由もあり、地方の会社売却は増加傾向にあるといえます。ただし、地域の産業や経済状況によっては異なる場合があります。
市場の動向として競争が激化していることを理由に、都市部の大手への会社売却により事業拡大を目指すケースも増加しました。
地方の会社売却の課題
地方の会社売却の動向としては、さまざまな目的から増加傾向にあるものの、決してすべての会社売却が円滑に進められているわけではありません。
地方の会社には、地方ならではの理由があります。ここでは現在の動向を踏まえた上で、会社売却が円滑に進まない理由となる6つの課題を解説します。
- 後継者がなかなか見つからない
- 大手企業相手の会社売却への抵抗
- 仲介会社が少ない
- コミュニティが狭い
- 会社売却後の従業員の待遇や処遇
- 会社がワンマン経営の地方企業
後継者がなかなか見つからない
1つ目は、後継者がなかなか見つからないことです。地方の労働人口に影響を与えているのは、次の2つの理由が主に挙げられます。
地方から都市部に移り住む若者が増加
若者は会社のこれからを支える重要な労働力ですが、年々地方から都市部に移り住んで就職するケースが増加しています。
少子高齢化社会で地方の若者が少ない
日本国内の現状である少子高齢化社会も追い風となり、地方では労働力を確保しにくくなってしまいます。
この現状が続けば、地方の企業は将来の後継者を見つけられず、重要な資産や事業が次の世代に引き継げなくなってしまう可能性があります。
大手企業相手の会社売却への抵抗
2つ目は、大手企業を相手にした会社売却への抵抗です。
地方の中小企業では、多くの経営者は自分が会社を育て上げたことにプライドを持ちながら日々会社運営しています。
このような経営者は企業売却で会社が他社のものになってしまうことを気持ち良く思いません。
加えて、都市部の大企業に会社売却すれば現状維持の運営方針や事業内容が変わり、地域の良さを生かした会社経営が進められるのではないか不安に思う方もいます。
仲介会社が少ない
3つ目は、会社売却の仲介会社が少ない点です。
地方は首都圏に比べて会社売却を相談できる窓口があまりありません。その理由から、経営者は会社売却に興味を持ってもアクションできず、現状として会社売却が進められない状態に陥りがちです。
都市部に会社売却の相談を行うだけでも、地方からの移動で労力がかかるのも事実です。
コミュニティが狭い
4つ目は、コミュニティが狭いことです。
地方は都市部と比べて会社の数も少ないので、限られた会社しか選択肢に挙がりません。
狭いコミュニティの中で会社売却を進めようとしても、納得のいく会社がなかなか見つからないのが現状です。
会社売却後の従業員の待遇や処遇
5つ目は、会社売却後の従業員の待遇や処遇です。
地方の中小企業は、都市部の大企業に比べて従業員の数も少ない傾向にあります。
中小企業の経営者は、一緒に働いてきた従業員を家族のように思う方もいます。
大企業に売却された後で、既存の従業員の負担が増加してしまったり待遇が悪いものになってしまったりするのは経営者としても不本意です。
ワンマン経営の地方企業
6つ目は、会社がワンマン経営の場合です。この状態が続くと会社売却が難しいとされています。
その理由は、重要人物の退任後に会社がこれまでと同じように回らない可能性があるからです。その人物がいなくても影響がないような経営が求められます。
地方における会社売却の課題の改善策
地方の会社売却には、都市部とは異なる課題があることを解説しました。
課題が多いからといって会社売却を諦める必要はありません。ここでは、地方の会社売却の課題に対する主な改善策を5つ紹介します。
- 経営者が早めに後継者を探す
- 都市部の大手企業が積極的に会社売却を行う
- 顧客や取引先を限定しない
- 営業キャッシュフローをプラスにする
- 売り上げを上げる仕組みを作る
経営者が早めに後継者を探す
1つ目の改善策は、会社経営者が早めに後継者を探すことです。
長年築き上げてきた会社の廃業を避けるためには、将来的に会社の事業を承継する人材が欠かせません。
後継者不足の中で慌てることがないよう、先を見据えた対策が求められます。
都市部の大手企業が積極的に会社売却を行う
2つ目の改善策は、大手企業による積極的な会社売却の実施です。
人材不足や後継者不足といった地方の状況を日本の企業全体の問題として捉え、大手側からも働きかけを行うことが重要です。
会社売却は増加傾向にあるわけですから、地方の会社も会社売却を正しく理解して、円滑に交渉を進められるようにすると良いでしょう。
顧客や取引先を限定しない
3つ目の改善策は、顧客や取引先を限定しないことです。
顧客や取引先が限られていると、買い手側は憂慮してしまいます。その理由としては、その取引先との契約がなくなった途端に利益が見込めなくなるリスクがあるからです。
さまざまな顧客が存在すれば、幅広く多様な取引をしている会社として魅力もアップします。
営業キャッシュフローをプラスにする
4つ目の改善策は、会社の営業キャッシュフローをプラスにすることです。
キャッシュフローがマイナスの場合、それを理由に買い手企業は会社売却候補から外してしまう可能性があります。
もし一部の事業がマイナスになってしまっているのであれば、分社化でマイナス要素を切り離すのも1つの手段です。
売り上げを上げる仕組みを作る
5つ目の改善策は、売り上げを増加できる仕組みを作ることです。
売り上げが上がりそうなビジネスモデルがあれば、会社売却の相手側企業もそれに対して価値を見いだしやすくなります。
地方企業の中でもアイデアや工夫を常に考えているアクティブな企業は魅力的です。
地方の会社売却を成功させる方法
地方の会社売却は前述の通り、後継者不足といった地方特有の課題が存在します。
しかし、以下の5つのような取り組みを積極的に行うことで、会社売却を成功させられる可能性が上がります。
- 会社売却の目的の明確化
- 自社ブランドのアピール
- 人材育成や社内体制の構築
- デューデリジェンスの確実な実行
- 専門家や仲介会社への相談
会社売却の目的を明確にする
1つ目は、会社売却の目的明確化です。
後継者不足の解消や事業拡大、技術獲得など、売り手側と買い手側の会社の理由や目的、意図がマッチした会社売却の方が結果として成功につながります。
自社のブランド力をアピールする
2つ目は、自社のブランド力をアピールすることです。
地方の会社でもその会社にしかない事業や商品を的確にアピールできれば、会社売却によって買い手側企業はどのようなメリットがあるのか明確になり、成功につながります。
人材育成や社内体制の構築をしっかりと行う
3つ目は、人材育成や社内体制の構築です。
会社を成長させるためにどのような工夫や対策を講じているのかを買い手側が把握できれば、それは魅力になります。
デューデリジェンスを確実に行う
4つ目は、デューデリジェンスを確実に行うことです。
デューデリジェンスとは、取引相手の企業に関する情報収集や調査を意味します。
事業内容や財務、法務に関すること、そして企業のリスクなどマイナス要素を含む部分まで調査、分析します。
会社売却におけるトラブルを防ぐにはデューデリジェンスで調査を入念に行うのが良いでしょう。
専門家や仲介会社に相談する
5つ目は、専門家や仲介会社への相談です。
自身で会社売却を進めるよりも、会社売却に関する知識を豊富に持った専門家や仲介会社に相談した方が成功につなげられる可能性は高いでしょう。
ただ、会社売却が増加している中でも、地方の現状としては経営者が会社売却を気軽に相談できる専門的な窓口は都市部のように多くはありません。
地方で会社売却を行う場合の相談先
こちらでは、地方で会社売却の相談ができる場所を紹介します。
地方だからといって会社売却の相談が全くできないわけではありません。地方で会社売却を検討する際は、以下の10カ所を参考にしてください。
- 金融機関
- 取引関係のある企業
- 税理士・公認会計士
- FA(ファイナンシャルアドバイザー)
- 中小企業診断士
- 弁護士
- 仲介会社
- マッチングサイト
- 商工会議所
- 事業引継ぎ支援センター(事業承継・引継ぎ支援センター)
金融機関
まずは、金融機関です。
地方銀行は、その地域ならではの現状やビジネスに関する情報を収集できます。その地域の会社との取引が多いので、会社としてのコネクションが豊富です。
地方銀行だけでなく、都心部の大手銀行の支店が設置されているケースも多いので、こちらを利用するのも良いでしょう。
金融機関なので情報管理のセキュリティも信頼できます。
取引関係のある企業
取引関係のある企業に相談するケースもあります。
既に取引のある企業であれば信頼関係が構築されているため、円滑に交渉を進められるかもしれません。
ただ金融機関とは異なり、会社売却の情報が流出してしまわないように注意する必要があります。
税理士・公認会計士
税理士や公認会計士といった専門的知識を持つスペシャリストに相談するのも良いでしょう。
地方企業の財務状況を分析したり、必要な税務に関して的確なアドバイスを得られたりします。会社売却手続きを仲介してくれるケースもあるので、効率的です。
会社売却の情報セキュリティに関しては安心できますが、すべてのプロセスに長けているわけではありません。
FA
FA(ファイナンシャルアドバイザー)も会社売却の相談先として挙げられます。
会社売却に関する知識を豊富に持ち、幅広いネットワークから適切な会社売却先を見つけます。
交渉を含め会社売却プロセスをよりスムーズに進められますが、一方でサービスに対するコストがややかかる点に留意する必要があるでしょう。
中小企業診断士
中小企業で会社売却を検討している場合、中小企業診断士に相談するのも良いでしょう。
中小企業診断士は国家資格で、経営コンサルトとして企業の事業評価や財務、法務などを分析、評価、アドバイスを行うスペシャリストです。
幅広い内容の相談に乗ってくれるのが強みですが、会社売却のみに長けているわけではありません。
弁護士
弁護士からは法務的なアプローチで会社売却に関する助言が得られます。
会社売却の際、相手側企業とのトラブルを防ぐために必要な法的知識を助言してくれる点がメリットです。
ただし、全ての弁護士が会社売却に強いわけではありません。
仲介会社
会社売却の仲介会社は、言葉の通り会社売却を円滑に進められるように仲介してくれる専門家です。
地方の売り手と買い手のマッチングから手続きまでサポートします。売り手と買い手両方の立場を理解し、両者にとって利益となる取引を目指すでしょう。
ファイナンシャルアドバイザーに比べてコストが低い傾向にあります。しかし、今後の取引を想定し、買い手側に利益が偏りやすくなるので、慎重に金額の調整を進める必要があります。
マッチングサイト
会社売却先の選択肢を広げたい場合、マッチングサイトの利用も良いでしょう。
マッチングサイトでは、主に会社売却の売り手と買い手のマッチングサービスを提供しています。
その地方にとらわれることなく幅広い会社から買い手候補を見つけられるのがメリットです。交渉も比較的スピーディーで、費用も抑えられます。
オンラインで行える事柄が多く効率的ですが、会社売却を真面目に考えている企業かを見極める必要もあります。
商工会議所
地方の商工会議所を利用しても良いでしょう。その地方に特化した会社売却の動向や情報が得られます。
地方銀行のネットワークから会社売却に必要な情報を入手しやすいだけでなく、相談のコストが比較的安価である点がメリットです。
ただし、会社売却の専門機関ではないので、会社売却の交渉といったプロセスに進むには専門家のサポートが必要です。
事業引継ぎ支援センター
国で設置された公的機関である事業引継ぎ支援センター(事業承継・引継ぎ支援センター)を利用するのも良いでしょう。
事業承継に特化した助言が無料で受けられます。中小企業診断士などの専門家がアドバイスしてくれるのも特徴です。
ただし、交渉や契約といった、より深いプロセスに移る場合は、さらに別の専門家・機関のサポートが必要になるかもしれません。
地方の会社売却は事前準備をしっかり行うことが成功の秘訣!
地方の会社売却は、増加傾向にあるものの都市部に比べて後継者不足や会社売却への抵抗感、専門窓口の少なさなど、さまざまな理由が現状として挙げられます。
しかし、専門機関でなくても気軽に会社売却を相談できる場所は地方にもあります。目的に合わせて情報収集を進め、事前準備がしっかりできていれば地方の会社でも会社売却を成功につなげられるでしょう。
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